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株式会社江東微生物研究所
食品分析センター 大鷹 哲文
株式会社江東微生物研究所は、1957年(昭和32年)に臨床医学、予防医学、公衆衛生の向上を目的として創業し、臨床検査分野で地域医療への貢献をめざして、地域に密着した歩みを進めてきました。長年にわたり培った技術・信頼を基盤として環境衛生検査分野に業務を拡大し、1994年(平成6年)に水質や土壌分析などの環境衛生検査を目的とした環境分析センターを福島県いわき市に設立、2005年(平成17年)に食品中の微生物検査や栄養成分検査、異物検査を目的とした食品分析センター(以下、当センター)を福島県郡山市に設立しました。
2011年(平成23年)3月、東日本大震災では当センターも大きな被害を受けましたが一致団結して乗り越え、さらに食品や飲料などの安全性確認のための放射能検査をスタートしました。臨床検査・環境衛生検査を通じ人々の生命と健康をトータルに支えていくことに誇りと使命感を持って前進しています。
近年、ノロウイルス等による集団食中毒事例、消費期限改ざん、放射能汚染、農薬混入問題など食に関する多くの報道があり、消費者の食品に対する安心安全への意識が高まってきている中、消費者庁は食品の安全性確保および消費者の適切な商品選択の機会を確保するために、食品衛生法、健康増進法(厚生労働省)、JAS法(農林水産省)の3法に規定されていた食品表示を統合し、2015年(平成27年)4月に食品表示法の施行となりました。
その中で、栄養成分[熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量]に関して、原則として全ての一般用加工食品および一般用添加物に表示することが義務付けられ、経過措置期間を含めて2020年(令和2年)3月までに表示することとなっています。
食品表示法の施行以降、栄養成分を商品に表示するため、多くの検査依頼が当センターにも寄せられています。依頼数は経過措置期間終了に近づくにつれ増加し、お客様の中には数多くの検査を依頼されることがあります。当センターの栄養成分検査は公定法に基づいた検査のため、分析には時間や経費がある程度必要で、お客様の負担が大きいと感じていました。私たちはお客様の負担を少しでも軽減できればと近赤外線による栄養分析に目をつけました。
近赤外線分析は公定法のように各々の項目(たんぱく質や脂質等)の検査ではないこと、検査試薬を必要とせず、食品の吸収スペクトルから栄養成分の分析が可能なこと、近赤外線分析をして栄養成分値を出すことは合理的な推定であり、商品への表示もできることから栄養成分表示を目的としたお客様に対してニーズに応え、さらに検査時間・費用を抑える負担の軽減に繋がることから私たちは近赤外線分析装置の導入検討を始めました。
近赤外線分析装置は数社の取り扱いがありましたが、その中でもビーエルテック社のSpectraStarは、測定波長領域が広いことで無機質(特に栄養成分表示に必要なナトリウム)の測定ができること、校正機能が備わっていること、そして何より私たち自身で検量線が作成できることが当センターにおいて有用であると評価しました。 検量線の作成はその食材に対して真値に近い値を得ることが重要であり、当センターでは公定法での検査を実施しているため、両分析値を比較して検量線を補正し、精度のよい数値を食材毎に求めることが可能となります。
何故、推定値であるデータに精度を求めるのか。それは、検査センターとは精度が良くて当然であるとの意識をお客様はもたれているからです。当センターでは精度保証の一環として、試験所認定であるISO17025の認定を取得しています。認定項目は多岐にわたり、分野に関しては微生物検査、栄養成分検査、異物検査、放射能検査と幅広く網羅しています。
当センターでは、近赤外線分析が推定値とはいえ、可能な限り分析値と同等の結果を出す義務があると考えており、検量線を作成できるこのSpectraStarは一定の精度も実現することができる機器だと確信しています。
今後も食品事業者様に関しては、新商品開発等の度に栄養成分表示が付随します。また、食品業界ではHACCPも義務化され大きな変革期を迎えています。HACCPでは工程管理が重視され、その妥当性や検証が求められており、その品質管理手法の一つとしてこの近赤外線分析が一翼を担うことができます。例えば、水分量やたんぱく質量を日々検証し、工程管理の妥当性を推し量ることができるように、近赤外線分析は食品表示だけでなく、日々の品質管理にも貢献することが可能です。
また、ビーエルテック社ではSpectraStarで食物繊維の測定も検討中とのことから、近赤外線分析は益々食品業界で活躍していくのではないでしょうか。
当センターも栄養成分表示やHACCPについての相談、コンサルから分析まで、統括したサービスを提供し、食の安全・安心をめざして貢献して行きます。