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しょうゆ業界と近赤外分光法(NIR)

しょうゆ業界と近赤外分光法(NIR)

一般財団法人日本醤油技術センター
表示・技術部 次長 水村津与志

はじめに

私が近赤外分光法(以下NIR法)に初めて出会ったのは、現在の職場(当時は財団法人日本醤油検査協会)にアルバイトとしてやってきた平成2年のことでした。その時は、実家がしょうゆ製造業だという東京農業大学の学生が、卒業研究でインフラライザー450型によるしょうゆの成分分析を行っていましたが、当時すでに某大手醤油メーカーでは、工場内での品質管理分析にNIR法を用いていました。

JAS格付分析への活用

その後しばらくすると、NIR法の装置を導入する工場が徐々に増え、業界としてもこれをしょうゆのJASの格付分析に用いるべく委員会を立ち上げ、全国共通の検量線である「ユニバーサル検量線」を作成しました。
このユニバーサル検量線を用いたNIR法は、JAS認証工場から各県醤油組合の検査所に提出されたしょうゆをまずNIR法で分析し、規格値ぎりぎりのものについては、「しょうゆの日本農林規格」に載っている測定方法で再分析するという「スクリーニング」のための方法として10年近く活躍してきました。
その後、JAS法の改正に伴い、しょうゆの格付分析は、規格に載っている方法以外での分析ができなくなり、NIR法は工場での品質管理への活用に限定されるようになってしまいました。
それでも、成分調整が終わったしょうゆを次の充填工程へ進めてよいかの確認など、結果が出るのにスピードを要する分析などでは、現在でもしょうゆ業界内で活躍を続けています。

栄養成分分析への活用

みなさまご存知のことかと思いますが、食品表示に関して、以前は「食品衛生法」(厚生労働省)や「JAS法」(農林水産省)が主な法律でした。栄養成分表示に関しては、「栄養表示基準」によりルールが決められており、栄養に関する強調表示(減塩や低塩など)をしたものに限り、栄養成分表示(熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム)が必要となっていました。
その後、消費者庁ができて、食品に関する法律が「食品表示法」に一本化され、この中では、栄養に関する強調表示をしたものだけでなく、原則すべての一般消費者向けの商品について栄養成分表示が義務付けられることになりました。その経過措置期間も2020年には終了します。
一方、しょうゆ業界は、全国で1200以上の事業者があり、そのうちの上位30社弱で全体のしょうゆ生産量の80%近くを製造しています。つまり、残りの20%を1200程度の事業者で生産していることで、いかに中小零細の事業者が多い業界であるかがお分かり頂けると思います。また近年では、普通のしょうゆだけでなく、しょうゆにだし、果汁、糖類、香辛料などを加えた「つゆ」「たれ」「だししょうゆ」「ぽん酢醤油」など、しょうゆをベースとした
加工調味料が数多く作られ、小規模事業者でも何アイテムもの商品をそろえているのが現状です。
一般に公定法といわれる分析法(食品表示基準別表第9第3欄に掲げる方法)を行うには、それなりの設備や人手が必要で、しょうゆ業界でこの分析ができる事業者は非常に少ないということは想像に難くないと思います。さらに、この分析を外注するにしても、全アイテムを公定法で分析すると莫大な金額がかかってしまい、あまり現実的ではありません。
このようなことに鑑み、現在の法律では、(栄養に関する強調表示をした項目を除き)公定法以外の測定方法も認められており、また、各原材料の成分やデータベースから計算で求めた値を表示に用いてもよいことになっています。ただ、比較的単純な工程で製造される製品であれば計算から求めることもできると思いますが、多種多様な原料を用いたり、だしの抽出行程があったりすると、計算もなかなか複雑で手間になってしまいます。
そこで当センターでは、NIR法による栄養成分分析を安価で受託できるようにすれば、必ずや事業者の役にたつのではないかと考え、装置の導入を決めました。
導入に当たっては、全国のしょうゆ関連商品を200本以上集め、これをBLテック社のご協力で、スペクトルを測定し、公定法による測定値から検量線を作成していただきました。スペクトル測定の際、BLテック社の皆様がいろいろな製品(油のべたつくもの、にんにくの香の強いもの、よく混ぜると気泡を含んでしまうものなど)に四苦八苦しながら何日もかけて測定していただいたことがとても印象に残っています。

おわりに

現在当センターでは、しょうゆ関連商品のNIR法による栄養成分の分析を受託しながら、同時進行で、より精度よく測定するべく、サンプルの前処理方法、検量線の補正、日常的な管理方法などについて検討を続けているところです。
今回、検量線を作成するにあたり、最低80本のサンプルが必要だとのことで、当センターでこれだけのサンプルを集めるのは、なかなかハードルが高いと思っていましたが、各都道府県の醤油組合の事務局にメールでお願いしたところ、軽く200本を上回るサンプルを集めることができました。これは、組合事務局が「NIR法による栄養成分分析が組合員のためになる事業である」ということを十分ご理解いただいて、期待も含めて当センターにご協力いただいた結果だと思っております。このような業界に身を置かせていただいていることを大変うれしく、また誇りに思うとともに、NIR法は今後もしょうゆ業界内で様々な形で活躍していくものと確信しています。

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kimura@bl-tec.co.jp
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