オートアナライザーの歴史
オートアナライザーの歴史
(その1) TRAACS(トラックス)型海水分析システム
1957年にアメリカのDr.Skeggsにより発明された「連続流れ分析法(Continuous Flow Analysis、略してCFA)」と呼ばれる原理を用い、テクニコン社が臨床分野における血液中の生化学項目の高速自動分析装置として開発したのが世界最初の自動化学分析装置オートアナライザーである。
TRAACS型海水分析システムの開発
1987年米国テクニコン社新型の連続流れ分析装置としてTRAACS800型を開発した。この装置は従来のオートアナライザーシリーズとは異なり一体型になったポンプ・分析カートリッジ・検出器が縦に積み上げられたユニークな構造をもつものであった。日本国内に輸入されたこの装置は直ちに国内向けのアプリケーションが開始され翌19年には海水に含まれる低濃度の硝酸塩、アンモニューム塩、リン酸塩等が測定できる装置として販売された。マイクロフロー流路、コンピューター制御、オートダイリューション・自動再検機能等の先進的な機能が搭載されていた。
また、このシステムは2台の検出器をもつ構成ながら試薬の置き換えのみで4項目あるいは5項目を測定できる能力があり、その後のマルチテストカートリッジとして連続流れ分析技法の発展に貢献することになる。TRAACS800型は機能の追加や性能の向上が図られTRAACS2000型やQuAAtro型、SWAAT型に発展していった。国内に於いて連続流れ分析による海水分析は1968年のオートアナライザーBasicAAにまで遡ることができるが、海洋観測指針や海洋観測ガイドラインにも連続流れ分析が収載されている。
(その2) 蒸留技法の自動化
シアン・ふっ素・フェノール類アンモニアを測定するオンライン蒸留器を装備した連続流れ分析装置は1974年に開発された。
このユニークな技法は世界中の分析技術者により歓迎・支持された。シアン・フッ素等を比色測定するには、サンプルを予め各々蒸留しなければならない。この蒸留操作は煩雑で手間と時間を要する。また測定後の器具の洗浄をしなくてはならない。連続流れ分析装置は蒸留から測定まで全て自動で行うことができる。オートサンプラーから採取されたサンプルは、蒸留試薬が加えられ、続いて連続蒸留装置に導入される。連続蒸留装置で加熱されて気化した成分は冷却コイルで冷却された後に、比色分析法で測定が行われる。この分析法は1980年代のはじめに日本国内に紹介され、現在までに約500台以上の装置が販売された。
1996年高感度のシアンやフェノールの測定フローが開発された
2002年土壌汚染対策のシアン、ふっ素の測定フローが新しく開発された。
2011年連続蒸留方法がJISK0170に収載された。
これらの開発は技術の独自性に強いこだわりを持つ川本和信(現ビーエルテック社代表取締役社長)が試薬にアルミ溶液やふっ素溶液を用いるなどを考案した結果である。
またハード面でも検出器の感度アップやシアンの2段蒸留などの独自の進化を成し遂げている。
2017年11月現在
(その3) 連続オートクレーブ分解装置付全窒素・全りん分析
全自動全窒素・全りん分析装置の開発
煩雑で時間を必要とするオートクレーブ分解を用いた全窒素・全りんの分析を自動化できないかと考え、試行錯誤の末に1995年に開発されたのがAACS型全窒素・全りん測定装置である。サンプラーから分取されたサンプルは、分解液が添加されたあと、連続オートクレーブ分解加熱槽で30分120℃加圧加温される。分節空気の気泡は、この加熱により膨張し、これによりサンプルを加圧する。手分析に於いて、オートクレーブ槽の中のサンプルを入れた耐熱ビンの中の空気が膨張してサンプルを加圧するのと同じ状態を再現している。オートクレーブ分解されたサンプルは、再びポンプにより吸引され、その後、全りんはモリブデンブルー比色法、全窒素は紫外線吸光光度法、または銅カドミ還元カラムによって硝酸イオンを亜硝酸イオンに還元した後,ナフチルエチレンジアミン吸光光度法で窒素分を検出される。
この手法により、公共用水はもとより排水、下水道流入水、海水まで多くの対象サンプルの全窒素・全りんの分析が自動化された。
その後このシステムはオートサンプラーに―大型の超音波ホモジナイザーの追加や流路の組み換え分解部の改良等の改良が施され国内で400台以上が販売され、また海外にもこの技術が輸出されている。
AACS型全窒素・全りん測定装置は1995年に技術の独自性に強いこだわりを持つ川本和信(現ビーエルテック社代表取締役社長)により開発実用化された。
*1号機2号機は熊本県衛生公害研究所(現熊本県保健環境研究所)倉敷市公害監視センター(現倉敷市環境監視センター)に導入された。