近赤外分析装置 回折格子分散型分光計の原理と優位性 2022.04.17 回折格子分散型分光計の原理と優位性 分光原理 回折格子は、光の波長程度の間隔で多数の溝を刻んだ分散素子で、白色光を入射すると回折角に対応した波長の単色光に分散することができます。 光源ランプの後に回折格子を、回折格子の前後にスリットを配置し、入射角・回折角を走査することで特定の波長の光を取り出すことができます。 格子定数(回折格子の溝の間隔)をd、光の入射角をα、回折角をβとすると次式を満たす波長λの光が取り出せます。 このため分散型で測定したスペクトルは横軸が波長(nm)で得られます。 分散型の優位性 波長を走査して単素子の検出器で検出しますので、高感度でノイズの非常に少ないS/N比が良好なスペクトルが得られます。これにより、低濃度の物質を感度良く測定する事が可能になります。 他の分光方式と異なり、情報量が多い長波長側で分解能が高くなりますので、定量分析での利用で有利です。 【分散型分光法の身近なイメージ】 太陽光(可視光)をプリズムに通すと赤~紫まで七色(実際には連続的に変化しています)の光の帯に分かれます。これを細いスリットに通すと、特定の色の光だけを取り出すことができます。プリズムを回転すると帯が動くため、スリットで取り出される光の色が変わります。分散型分光法では特定の色(波長=波の山と山の距離)の光を取り出してサンプルにあて、反射した光の強度を測定します。(近赤外光は目では見えません) 【吸光度分析の身近なイメージ】 私達がトマトを選ぶ際に、赤色の濃いものはリコピンが多いと考えます。リコピンは緑の光を吸収しますので緑の反対色の赤が濃いほど、リコピンが多いと考えることができます。このように物質が吸収する光の波長の吸収の強さから、その物質の濃度を知ることができます。 光の吸収が強いほど、物質の濃度が高いことがわかります。 近赤外領域の光でも同様に、物質はそれぞれ色(特有の波長の光を吸収)を持ちます。ある物質の濃度を測定したい場合、いろいろな色の光を照射して、何色の光がどれくらい吸収されたか(照射した光と反射した光の強度を測定して、どれだけ吸収されたか測定します)測定して、各色の物質の濃度を測定します。 多変量解析を用いた定量分析 サンプルの吸光度は物質の濃度に比例しますが、近赤外領域では吸収ピークが重なり合うため、一つの波長の吸光度から濃度の検量線を作成できることは稀です。近赤外領域で定量の検量線を作成する場合、微分や正規化などのスペクトル処理を施したうえで、多変量解析(ケモメトリックスとよぶ)を用いて定量・定性の分析を行います。 定量のケモメトリックスには、重回帰分析(MLR)、主成分回帰分析(PCR)、部分最小二乗法(PLSR)などがあります。 用語説明 波長:波の山と山、谷と谷の間の距離 分散:波長の異なる光を分けること 素子:機器を構成する単位部品 白色光:全ての波長の光が混ざった光 光源ランプ:タングステンランプなど、可視光~赤外光まで含む光を照射する 走査:波長を細かく分解し、順番に測定する 格子: 高感度:微弱な信号でもノイズに埋もれることなく検出できます kimura@bl-tec.co.jp See Full Bio kimura@bl-tec.co.jp See Full Bio 近赤外分析装置近赤外分析装置 白しょうゆ及び白しょうゆ加工品への手分析からNIRへ... 食品成分・機能性成分を迅速・簡単・高精度・試薬不要で...